今週末にこのコンサート(http://officevega.blog60.fc2.com/blog-entry-54.html)を聴きに行くことにしていて、ちょうど手元にない2曲が入っているこのCDが某オークションに出品されていたので、勉強用にと入札し、無事落札。
もちろん中学生だか高校生だかの頃に発売され、当時から名盤の誉れ高く、いつかは手に入れようと思っていた1枚だが、ちょうどこの機会にビクター盤が手に入れられて幸いだった。初期盤とジャケットデザインが違う(確か)のがちと残念だが、音の良さは変わらないだろう。
バシュメット31歳の録音だが、完璧である。若さと深さが見事に同居し、完璧な技巧で作品の暗部をえぐる。それをまたいっそうの深さで支えるリヒテルの見事なこと。上には上がある、ということだ。
さて、聴いたことはあるショスタコーヴィチのソナタはともかく、ヒンデミットは事前に聴いておいてよかった。曲の構成が相当難しいのだ。本当に幸いなことにこのCDにはインデックスが刻んであって、下に記すすべての変奏の出だしがどこか分かる。したがって、解説を読みながら、インデックス表示を見ながら、CDを聴けば、構成が分かる。
ヒンデミットのヴィオラ・ソナタの構成
第1楽章 幻想曲
第2楽章 主題と変奏
1.主題
2.第1変奏
3.第2変奏
4.第3変奏
5.第4変奏
第3楽章 フィナーレ:主題と変奏 ロンド形式
1.主題 ロンド主題(A) と主題Bを提示
2.第5変奏 第2楽章の主題の第5変奏とロンドとしての主題C(とロンド主題も?)の提示
3.第6変奏 同じく第6変奏と、ロンド主題やら主題Dやらいろいろと提示したり展開したり
4.第7変奏 ロンド主題だかもとの主題だかによるコーダ
この作品がヒンデミット24歳の若書き(彼は若いつもりじゃなかったろうが)であることを考えると、まず構成を決めてから曲を書いていったのではなかろうか。それにしても後年のギクシャクした機械的な音楽からは考えられない流麗な美しい曲である。
なんでそんなことを書くかというと、ショスタコーヴィチの曲が、病床にあって書いた最後の作品であり、その曲の達観、彼岸、諦観の度合いが濃すぎるから、つい比べてしまったからである。ショスタコーヴィチの作品番号140番台の曲は本当に彼岸の音楽ばかりである。交響曲とカルテットのそれぞれ15番、そしてミケランジェロ組曲。
ところで、私が興行主なら、ヒンデミットのソナタの時には、演奏する横でお客様のために「第1変奏」とか「主題C」とか字幕で表示してあげたい気持ちです。漫然と聴くのと構成を追いながら聴くのでは、聴く楽しみが全然違うと思うんだけどなあ。
Yuri Bashmet, viola
Sviatslaw Richter, piano
Paul Hindemith
Viola Sonata in F op.11-4
Benjamin Britten
"Lachrymae" op.48
Dmitri Shostakovich
Viola Sonata op.147
1985.3.6-8, Paulussaal, Freiburg, West Germany
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