2007年04月10日

ジュリーニ/フィルハーモニア/ブラームス

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ジュリーニは録音人生の中でたびたび同じ曲を取り上げてきたが、ブラームスの交響曲も例外ではなく、メジャー・レーベルの正規録音だけで1番、2番、4番は3種、3番は2種ある。それぞれの時代にコンセプチュアルに録音されたもので、フィルハーモニア時代の最初の全集、シカゴ響との「ラスト・シンフォニー」シリーズ、DGにおけるロス・フィルとの蜜月時代の録音、そしてウィーン・フィルとの「何とか間に合った」全集録音。

フィルハーモニアとの全集は、おそらく最も存在感が薄いものであろうし、残念ながら存在意義も見出しにくいところがある。事実、4番については、世界的に廃盤のようだ。4番には翌年のシカゴ響との録音があるので仕方がなかろう。
というわけで、LP時代にはどうだったか分からないが、CD時代において唯一4曲セットで発売された形態のドイツ盤を某オークションで、比較的安価(この希少盤にしてはということだが)で手に入れられた。

ジュリーニのフィルハーモニア時代については、50年代のフランクの交響曲などのいくつかの曲で「きびきびと、颯爽とした演奏」というイメージがあったのだが、このブラームス全集は全く違う。まさに、盤歴初期の「颯爽」時代と晩年の「微速前進」(by 金子建志)時代とをつなぐミッシング・リンクのような演奏であった。
ジュリーニのフィルハーモニア時代については、山崎浩太郎氏のサイトで外山雄三氏の感想を引用されている。
http://www.saturn.dti.ne.jp/~arakicho/wien60/wien6023a.html
さらに、以前にも引用したレコード芸術・別冊「演奏者別クラシック・レコード・ブックVol.1 指揮者編」(1987年10月30日発行)のジュリーニの項の、三浦淳史氏によるウォルター・レッグの批評。
「ジュリーニはすばらしいオーケストラ・トレーナーだ。彼は信じがたいほどの強烈さを持っている−実際、彼にとってもっとも重要なのは、ドラマティックな強さとリズムだった。彼の演奏のすべてにはスイングがあり、イタリア人的なエモーションと見事な色彩のパレットをそなえていた。しかし、音楽的には彼は決してリラックスしないように見えた。つまり、音楽に干満がないのだ。歌手にとっては、それはいっこう邪魔になるものではなかったが、わたしはいつも、それが彼の演奏にかけている要素だと思っていた。」
ジュリーニの特質を見事に射抜いたすばらしい表現である。なお、この全集でも、ニュー・フィルハーモニア時代の4番以外はウォルター・レッグがプロデュースしている。

さて、演奏であるが、いちばん最初に収録された1番の、冒頭の序奏のテンポが転びそうなほど遅くてまずびっくり。主部も遅い。そしてなにより、4楽章の第1主題がまたこけそうに遅い。
そして、4番の3楽章。ふだんは駆け足のようなこの楽章が、のんびり歩きである。
そして面白いことに、たとえばチェリビダッケがその瞬間に鳴り響く音楽要素のすべてを現前させるためにテンポを遅くするのとは違うことを意図しているようなのである。その意図は聴いていてもよく分からない。「遅くしたいから遅くしたんだ」というのがいちばん正しいように私には思えるが、私が未熟な聴き手だからかもしれない。
しかし、おそらく50年代の颯爽時代から、彼自身の年齢も50歳台に近づき(4番では50を越え)、いろいろなことを考えるようになったのだろう。ウィーン・フィルの全集でやったことは、このフィルハーモニアの録音の時点ですでに彼の中で確立した解釈(手法)のようなのである。むしろ、ギラギラしたカンタービレはこの時代にしか聴くことができない。
もちろん個性的に聴かせるためにそうしたのではなかろうが、非常に個性的なブラームス理解である。そういう意味で、後年のロス・フィルやウィーン・フィルの演奏より、このフィルハーモニアの演奏の方がジュリーニのコア・コンセプトを理解しやすいのかもしれない。
ちなみに、フィルハーモニアの演奏は、クレンペラーが指揮したときとはまるで別人である。建築的なクレンペラー、カンタービレのジュリーニ。この時代のフィルハーモニアがそれを十全に受け止めるほどには状態がよくないのは少し残念である。

不思議なのが、4番の録音のこと。この録音は1968年4月23日と7月12日、そしてより有名なシカゴ交響楽団との録音は、1969年10月15日。その間わずか1年。プロデューサーもディレクターも違うので、それぞれ独立に企画されたものかもしれない。むしろニュー・フィルハーモニアとの4番は、落穂拾い的に何とか全集の格好をつけるために帳尻合わせをしたのかもしれない。
http://www.hmv.co.jp/Product/detail.asp?sku=1870808
そうであったとしても、この4番は、4曲の中では最もジュリーニらしさの濃い演奏である。シカゴの演奏は聴いたことがないので比べられないが。

先に引用したとおり、ジュリーニの60年代は万人に認められたかどうかはよく分からない。それにもかかわらず、粘り強く録音を続けたEMIに感謝したい。この時代の録音活動がなければ、後のジュリーニの傑作録音群を聴くことができなかったかもしれないのだから。


Johannes Brahms

Sinfonie Nr.1 c-moll, op.68
1961.1.16,17, Kingsway Hall, London

Variationen über ein Thema von Joseph Haydn, op.56a
1961.1.25,26, Kingsway Hall, London

Sinfonie Nr.2 D-Dur, op.73
1962.10.10-12, Kingsway Hall, London

Tragische Ouvertüre, op.81
1962.10.12, 11.9, 11.12, Kingsway Hall, London

Sinfonie Nr.3 F-Dur, op.90
1962.10.12, 11.9, 11.12, Kingsway Hall, London

Sinfonie Nr.4 e-moll, op.98
1968.4.23, 7.12

EMI


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