2007年11月06日

「指揮棒」

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指揮棒は魔法の杖?マエストロが語る「指揮棒」考
エックハルト・レルケ著、野口剛夫訳、音楽之友社刊。

原題は単純に「指揮棒」。以前図書館であらかた読んでいたのだが、どうしても気になって、結局買ってしまった。これは面白い本だ。

1999〜2000年に、著者がインタビュアーとして、著名指揮者に片っ端から「指揮棒」への思いについて聴いてまとめた話である。
インタビューを受けた指揮者はあとで列記するが、びっくりするくらい錚々たるメンバーである。

さて、「指揮棒」について指揮者が語る話が面白いか、あるいは、インタビューとして面白いかと言うと、これがかなり疑問なところである。大半の指揮者の話は(その知名度とか業績と関係なく)かなりつまらない、どうでもよいものである。巨匠だからと言って面白いわけでもない。
そうは言っても「棒」についてだけでなく「指揮」についても語らざるを得なくなってくるわけで、そうした場面で指揮者の本音が見え隠れする。

このインタビューの中でいちばん面白かったのが、ルネ・ヤーコプスだ。彼は指揮棒についての自分の見解は一切語らず、指揮の、指揮棒の歴史について語る。多くの指揮者が言及したリュリの死因である「指揮杖」についても、より深い知識として、いつもそれを使っていたのではなく、編成が大きかったために大きな音の出る杖を使わなければならなかったと喝破している。
次に興味深かったのが、ハルトムート・ヘンヒェンの先が光る指揮棒のこと。これは、ラインゴールドやジークフリートの冒頭を真っ暗にする演出のために使うそうだ。そのときには何と楽員はアンプで演奏するそうだ!ラインゴールドの冒頭120小節なんて、ほとんど変化しないような音楽だが、プロはこういうこともできなくちゃいけないらしい。

結局この本はこういうまとめ方をして正解だったと思う。それは著者の思いと関係なく価値がにじみ出てきているような気がする。つまり、これだけたくさんの指揮者の生の言葉を一堂に集めたことに最大の価値があると思う。これは、インタビューの内容を「指揮棒」に絞り、30分程度でインタビューを切り上げることによって初めて実現できている。
つまり、「指揮」について語らせたら、こんなにコンパクトにはまとまらないし、これほど「率直」に語ってくれなかったかもしれない。「指揮棒」という隙を突くことで本心をさらけ出すことに成功したのではなかろうか。


ベルナルト・ハイティンク
セミヨン・ビシュコフ
ウラディーミル・アシュケナージ
ヘルベルト・ブロムシュテット
シモーネ・ヤング
ジェフリー・テイト
インゴ・メッツマッハー
ミヒャエル・ギーレン
ジェイムズ・レヴァイン
レナード・スラトキン
ピエール・ブーレーズ
レイフ・セーゲルスタム
エサ=ペッカ・サロネン
クリストフ・エッシェンバッハ
ケント・ナガノ
マリー=ジャンヌ・デュフール
マルク・アルブレヒト
ハンス・ツェンダー
ルネ・ヤーコプス
シアン・エドワーズ
アルトゥーロ・タマーヨ
サー・コリン・デイヴィス
トン・コープマン
ハルトムート・ヘンヒェン
コンスタンツィア・グルツィ
エリアフ・インバル
ネーメ・ヤルヴィ
ペーター・エトヴェシュ
ローター・ツァグロゼク
クワーメ・ライアン
ダニエル・ハーディング
アリシア・モンク
マリス・ヤンソンス
クルト・マズア
フィリップ・ヘレヴェッヘ
マイケル・ティルソン・トーマス
ミヒャエル・ホフシュテッター
ヤコフ・クライツベルク
ゲルト・アルブレヒト


posted by tak at 01:26| Comment(1) | TrackBack(0) | 音楽的思索 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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