
この6番をもって、ドホナーニがクリーブランドとデッカに録音したブルックナー、3〜9番が私のコレクションにようやく全部そろった。
結構風変わりな演奏である。
ミクロのレベルで言えば、ここの奏者がここのパッセージを、フレーズの入り、フレーズの頂点、フレーズの出を明確に意識して、きちんと歌って再現している。6番はかなり細かいパッセージの積み重ねっぽいところがあるが、概ね万全である。
ただし、テュッティになると妙に求心力がなくメロメロになったり、逆に構築的なコラールが聴かれたり、いいところとどうかと思うところが混在している。しかもテンポ設定が細かく変わって、しかもあまり一貫性がなさそうで、よくもまあオケがついていっているもんだと感心する。6番なんてめったに演奏しないだろうに、「よく知っている」要に聴こえるのが不思議、というかさすがビッグ5のオケだけのことはある。。
さらに、ブルックナーでこれをやるととたんにダサダサになる、しかも、ドホナーニがしょっちゅうやる「短めの四分音符」がたまに炸裂する(ドヴォルザークとかマーラーの5番とか幻想交響曲では成功しているのだが)。う〜ん。
で、これが駄演かというと、まあ私が勝手に「ドホナーニ補正」を掛けてしまっている(何でも許せる)のだと思うが、よい印象だけが残る。輝かしく、かつよく歌うブルックナー。6番で一押しにできるかというとどうかなあと思うが、聴くべきところはたくさんあろう。
バッハのリチェルカーレのウェーベルン編曲版は、これはまたメロメロにロマンティックな名演である。バッハらしくもウェーベルンらしくもない不思議な演奏だが、音楽の演奏の多様性への可能性を充分に示している。
ちなみに、この曲の録音日は、以前紹介したブルックナーの3番と同じ。あの演奏はここまでとろけるようなロマンティックさはない。
http://takmusik.seesaa.net/article/35023540.htmlヤフオクで調達。3,900円はちと高いがまあ本当に手に入りにくいのだから仕方ない。ちなみにパッケージにはドイツ・プレスとあるのに中身はフランス・プレス。実はこういうのは結構よくあることである。ブックレットとか紙類はまとめて3ヶ国語で印刷しておくのだろう。
The Cleveland Orchestra
Christoph von Dohnányi
Anton Bruckner
Symphonie Nr.6 A-Dur
1991.10.7, Severance Hall, Cleveland
Johann Sebastian Bach
Fuga ricercata a 6 voci, orchestrated by Anton Webern
1993.6.1, Severance Hall, Cleveland
DECCA