2008年02月22日

大植英次/大阪フィル/幻想

倉吉市の、倉吉未来中心で、大植英次と大阪フィルの演奏会。
大阪でやり、東京でもやった「幻想」を鳥取に持ってきて演奏してくれた。素晴らしい演奏であった。幸せを貯金した気分である。どれくらい幸せだったかというと、隣の人が飴の袋をガサガサさせても、近所の人の鼻息の音が大きくても、近所の人が鈴の音を鳴らしても、「いいよいいよそれくらい」みたいに鷹揚に構えられるくらい。
今日は、鳥取県中の音楽関係者が集っていたみたいな客席で、3歩歩くとあいさつ、みたいな状況であった。19時開演という微妙な時間帯なのに皆さん遅刻もせず(西部からと東部からは、倉吉まで1時間ちょっとかかるんです)どうやって来たんでしょうか?私はもちろん1時間休みを取って早めに職場を出ましたよ(笑)。みんなそうなんでしょうな。ホントに好きね。

前半はベートーヴェンの交響曲第8番。14型の、ちょっと大ぶりの編成で、いかにも「モダン楽器によるベートーヴェン」な演奏であった。いわば「初めて買ったレコードのベートーヴェン」。レコードの頃って、ベートーヴェンの交響曲は奇数番号と偶数番号に分けて演奏スタイルを語るみたいなのがあったじゃないですか。まさにその「偶数番号の交響曲」的な温和な演奏で、8番の最大公約数的な、ベートーヴェンを頭に浮かべたときに頭の中で鳴る音。もちろん隅から隅まできちんと凛々しく、4楽章では刺激もあって、「ああ幸せ」なひとときであった。

後半はベルリオーズの幻想交響曲。弦の編成は一緒。1楽章と2楽章と3楽章の真ん中らへんまでは、ベートーヴェンと同じく、幻想の最大公約数的な演奏であったのだが、どうもこれはそういう戦略だったようだ。つまり、夢のように美しい1楽章、夢のように楽しい2楽章、野原に出ても最初のうちは気持ちが落ち着いている3楽章、だったのだが、突然体を狂気が貫いて(真ん中らへんの騒がしいところ)、ふと我に返るんだけど、さっき見た野の風景とは微妙に違う。さっきは羊飼いのアシ笛に返事(バンダのオーボエ)があったのに、今度はなぜか雷が返事する。何で雷が返事するんだ???みたいな。もう精神状態はまともではない。
4楽章はおっそいテンポ。金管はいい音がしていた。バストロンボーンのペダルトーンだけがなかなか聴こえず残念。かなり最後らへんまでおっそいテンポで貫かれ、断頭台に登っていくところで急に駆け足になる。こいつは狂ってる!ふと頭によぎる恋人の顔も狂気にゆがんでいるがごとくきしむような醜い音。失敗かと思ったけどおそらくわざと汚い音を出させたのだろう。狂気の笑みを浮かべたままギロチンが降りてくる、みたいな感じ。
5楽章もまたおっそいテンポ。このテンポ設定は2つの意味があったように思う。まずは、「怒りの日のテーマ」が遅めの、弔いのコラールに聴こえるようにするため。遅いテンポで演奏される「怒りの日」周辺の音楽は切なさに満ちていた。と思いきや、コラールが繰り返されるたびに魑魅魍魎がうじょうじょ沸いてくる。2つ目の意味は、遅いテンポのおかげでこの魑魅魍魎が正確に描写できること。さらにそのあとのシンコペーションがぶつかるところが正確に演奏できる(「ンターターターターターター」に「ターターターターターター」が乱入してくるところ)。このおっそいテンポは「怒りの日のテーマ」が最後に出てくるところまで正確に貫かれていた。そのあとはなんだかどんどん速くなっちゃって、大騒ぎで終了、みたいな、やっつけ仕事っぽく聴こえるけどまあそれはそれでよし。アンサンブルも正確に、いい音で終わった。満足。
今回の演奏で、ファゴット(本当はバソンですが)が4本も使われている理由が分かったような気がした。4本あって初めてファゴットのハーモニーなり音色がオケの中で浮き上がって聴こえるようになるのだ。実はファゴットパートがこの曲の要所要所で骨格となっているようで、普段だとホルンセクションが担うような役回りをファゴットセクションがやっているみたいな感じかな。

アンコールはエルガーのエニグマ変奏曲から「ニムロッド」。私も何度もやっているので隅々を知っているが、やっぱりプロはうまいね。エルガーっぽいかどうかはともかく幸せに満ちた音であった。でもテンポは遅すぎとちゃう?エニグマ全曲の中ではあのテンポはありえないだろう。

いいことだけ書いて終わればいいんだが、どうしてもこれだけは書いておきたい。大植英次は巨匠になりたいのか?もっとやることがあるんじゃないのか?
雰囲気を出すために手をヒラヒラとか、指揮するのをやめて演奏者を眺め回したりとか、クライバーとかお年寄り指揮者がやるみたいな格好をしても、オケにはあんまり効果ないんじゃなかろうか。オケはまあそれっぽくついていくだろうが、なんだか指揮者が全部いいとこ取りみたいで、オケのメンバーも浮かばれないのでは。素晴らしい(だろう)音楽性が変なところで費やされているようでもったいない。そんな指揮に律儀についていくオケにブラーヴォである。


posted by tak at 01:04| Comment(0) | TrackBack(3) | 聴いた音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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