2008年09月13日

ヴェルザー=メストのブルックナーの9番

welser-moest_bruckner9.JPG

オタク的に音楽を聴くようになると、ついつい演奏スタイルを類型化してしまうようになる(演奏スタイルなどといっている時点ですでに類型化が始まっているとも言えるが)。
フランツ・ヴェルザー=メストが、自らが率いるクリーブランド管弦楽団との楽旅で、ウィーンの楽友教会大ホールで行った公演の映像である、ブルックナーの交響曲第9番。

実は、この演奏を聴くにあたって、情報が3つあった。
・大学時代の友人が楽旅前のクリーブランド公演で同じ曲の演奏を聴いたレポートを読んだ。
「子供が泣き出すぐらいの迫力」
・よく読んでいたウィーン在住のホルニストのブログでこの公演のことが紹介されていた。
http://ausdrucksv.exblog.jp/6742524/
「ブルックナーの音楽に内在するドラマ性(というと語弊があるな…、ウゥーン、精神性??)、を徒に誇張することなく、もっと違う部分に光が当たった演奏」
・レコード芸術9月号の海外盤試聴記で、吉村溪氏がこの演奏を紹介している。
「より激しく闘争的なイメージ」

そういう情報を頭に入れつつ、聴いていて最初に思ったのは、「ああ、これはヨッフムとベルリン・フィルの演奏に似ているな」ということ。すぐに既存のイメージに押し込めてしまったのだ。そしてまた「もう一つ似た演奏がある。ヨハネス・ヴィルトナーとヴェストファーレンのオケの演奏だ」と。実は、この2つの演奏、苦手なタイプの演奏と思ってしまって1度しか聴いていなかった。

今回改めてそれぞれ聴いてみたのだが、なるほど、類型化してしまった理由、そして苦手と思ってしまった理由が分かってきた。
いわゆるブルックナーらしい演奏というのは、テュッティを「ゥワーン」と鳴らすものが多いのだが、これらの演奏は「ワーン」とか「バーン」とかいう発音が多い。もったいぶることなく、また無用なルバートがなく音楽が進んでいく。

だが、こういう類型化では捉えきれない解釈、そして既存の情報だけでは表現し切れていない何かがあるはずだ、ということがずっと気になっていた。それは、すぐに分からなかった。
おそらくこういうことだろう。
ブルックナーの9番(4楽章完成版)を、鳥取で、フィリップ・ヘレヴェッヘ教祖様の指揮するロイヤル・フランダース・フィルの演奏で聴くという非常に貴重な機会があったが、その時はこの曲を「神々を描いた叙事詩」として感じてしまった。ハイティンクとシュターツカペレ・ドレスデンの8番でも同じようなことを感じた。つまり、やりようによってはこれらの曲は、演奏会形式のオペラみたいに聴かせることもできるのだ。しかし、ヴェルザー=メストはそういうことはしたくないのだろう。整然とした音響を着実に積み上げていくこと、音響や音楽がふやけないように発音をコントロールすること、その中で歌を表現すること。それによって、音楽の持つドラマは手段としてではなく結果として表現される。アーノンクールのようなアプローチ?

ところが、この演奏では妙に闘争的に聴こえるために狙いがはっきり聴き取れない。理由は二つあると思う。

一つは音質の問題。この映像の音質はあんまりよくない。多分、あまりに音が大きいので、響きで混濁しないように響き成分をカットしまくっていることが原因だろう。そのせいで、この演奏のよさが最初はなかなか分からなかった。

もう一つは、この演奏がかもし出すこの不思議な緊張感。おそらく、単純に、指揮者も奏者も緊張しているんじゃなかろうか。いつだかもベートーヴェンのミサ・ソレムニスとか演奏しているし、ウィーンに、このホールに慣れてないということはなかろう。しかし、やはりウィーンでブルックナーを演奏するということは、相当なプレッシャーだと思う。しかも、公演が1日しかないのに映像撮りが決まっていてミスするわけにいかない。そんな外的要因によるピリピリ感が演奏からなかなか払拭できない。

ところで、なぜかこの演奏からは妙な懐かしさを感じてしまうところがあった。私がこの曲を聴き始めたのは、マタチッチ指揮のウィーン響の演奏とシューリヒト指揮のウィーン・フィルの演奏で、いずれも自分で買ったLPである。特に第2楽章のトリオなど、あのなんともくつろいだ雰囲気。それがこのヴェルザー=メストの演奏からも感じられたのだ。彼もやはりオーストリアの人。それが自然に式に現れてしまうのかもしれない。あるいは、これらの演奏を聴きこんでいるためかもしれないけどね。

The Cleveland Orchestra
Franz Welser-Möst

Anton Bruckner
Symphony No.9 in D minor
Großer Musikvereinssaal, Vienna, 31 October 2007
medici arts


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