2009年03月02日

嘘つきアーニャの真っ赤な真実

yoneharamari.JPG

素晴らしいノンフィクションである。3年近く前に、50代の若さで亡くなった、ロシア語通訳者で名エッセイストの米原万里さんの作品。
大宅壮一ノンフィクション賞受賞作だそうだ。角川文庫。

1960年代、「プラハの春」の前に、プラハのロシア人小学校で過ごした米原氏の、ギリシャ人、ルーマニア人、ユーゴスラビア人の友達との交友と、中東欧の革命後に再会を期してそれぞれの国に赴いた顛末をつづったもの。
要約は、この人もまた当代きっての名エッセイストである斎藤美奈子氏が解説に記したとおり、「20世紀後半の激動の東ヨーロッパ史を個人の視点で鮮やかに切り取った歴史の証言の書」なのだ。60年代に、そして90年代においても、中東欧で生活することは、「日本の小中学校で子ども時代をノホホンとすごした私たち」(これも斎藤氏の言葉)とはずいぶんと違ったものである。
その苦労と、苦労をはねのけるバイタリティを持つ中東欧の人々に感銘を受ける。我々は本当にノホホンとすごしていていいのだろうか?

この本では3人の登場人物が、それぞれ別の、3つのエッセイでつづられる。何がすごいと言って(以下ネタばれ注意)、1つ目のエッセイには1人目の登場人物がつづられ、2つ目のエッセイには2人目の登場人物に加えてほんの少し1人目の登場人物も登場し、3つ目のエッセイでは3人目の登場人物に加えて、1人目、2人目も僅かに登場するという、その見事な階層構造。読み進める中で、全く混乱がなく、しかも話に厚みがだんだんに加わってくる。
クシシュトフ・キェシロフスキ監督の映画「トリコロール 青の愛、白の愛、赤の愛」3部作でも、同様の手法がとられていたが、あそこでの登場人物3人は全くの他人。こちらでは知人どうし。
全く素晴らしい構成力である。

もう一つ、斎藤美奈子氏の解説は米原氏が元気なころに書かれているので、全然感傷的でもなく美化もされていないのがよい。


ラベル:
posted by tak at 00:39| Comment(1) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サイト運営し始めた者なんですが、相互リンクしていただきたくて、コメントさせていただきました。
http://hikaku-lin.com/link/register.html
こちらより、相互リンクしていただけると嬉しいです。
まだまだ、未熟なサイトですが、少しずつコンテンツを充実させていきたいと思ってます。
突然、失礼しました。
6ScCJE41
Posted by hikaku at 2009年05月20日 21:13
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。