2009年04月29日

ベルリン紀行第3日23.4.09(終)

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最終回は長いよ。

カーテンをきちんと閉めていても、気が高ぶっているせいか6:00には目が覚める。やることもないので7:00前には朝食を食べる。

この日の目標はWannsee(ヴァン湖)に行くこと、Hamburger Bahnhof(ハンブルク駅という名の美術館)とGemäldegalerie(絵画館という名の美術館)に行くこと。

ポツダマープラッツ駅まで歩いてS-BahnのS1路線に乗ることに。チェックポイント・チャーリー、ベルリンの壁を見つつ駅に到着。S1路線は街中を通っていて、唐突にWannseeに到着するのだが、ベルリン1の繁華街から住宅街を通って、あっという間にひなびた観光地に着いた、みたいな、街中にいただけでは分からないベルリンの姿をよく知ることのできる路線である。40分ほどで到着。
Wannseeを横切るベルリン交通局の路線フェリーがあり、ベルリンウェルカムカードも使えるかなあと思って行ったんだが、運行は1時間間隔で、次に出るのは50分後の10:00。このひなびた観光地の朝が早くて何もないところで50分も待つのはつらいので、S7路線で中心街に帰る。S7路線は打って変わって、Grunewald(緑の森)という、ベルリンのすぐ横にある、森というよりは広大な雑木林を突っ切る路線。車窓から見ても、こんなところで迷いたくないよなあという広大さである。

S7路線はハンブルガー・バーンホフ美術館の最寄り駅であるHauptbahnhof(ベルリン中央駅)を通るので都合がよい。歩いて5分。
http://www.smb.museum/smb/kalender/details.php?lang=en&objID=21786&typeId=10
これをみたくて行ったのだが、美術館の構造がよく分からず、赤い幕の向こうで大きな音で音楽が鳴っているけどこれとの関係もよく分からず、とりあえず常設展示みたいなのを見て歩く。巨石が無造作においてあるのとか、工事現場用扇風機が向かい合わせて2つ並んでいるのとか、ガラクタが積み上げてあるのが突然動き出すのとか(そういえば去年広島でそういうのを見たねhttp://takmusik.seesaa.net/archives/200811-1.html)、「う〜ん、分からん」と思いつつも、その徹底振りにドイツを感じ、結局「カラス殺し」はどこだか分からず退散。
次に行こうと思ってもういちどHauptbahnnhofに行き、ホームに電車が入ってきたところで、「いや、ここで見とかなきゃ絶対後悔する」と思い直し、再び5分歩いてHanburger Bahnhofへ行ってみる。なんのことはない、赤い幕の向こうに、この美術館の名の由来たる駅の構内を美術館スペースにしたところがあって、そこにスピーカーがたくさん並べられており、そこから巨大な音がしていたのだった。
発想自体は単純なもので、98本のスピーカーから、鳥の鳴き声や波の音、ポップスやクラシックの音楽などをつなぎ合わせたものを、音像定位やエコーをうまくプログラムして、鳥が飛んでいくかのようのであったり、そこに歌手がいてギターを弾きながら歌っているようであったり、オケの中に入って聴いているかのようであったり、すぐ後ろでチェロがなり始めたり。
単純なんだけど、音質がいいもんだから、ついつい音がするほうに目をやって楽器の存在(あるいは不存在)を確かめてしまう。だからみんなきょろきょろしながら聴いている。とにかくだまされる自分が面白いのである。かっこいい音楽だったし、オーディオの音質もきれいだし、やっぱり聴いといてよかった!これがコンサートに関連があろうとはこのときは少しも思わなかったのだが。

ちょうど昼になったので、駅で昼ごはん。どうせビールもそんなに美味しくないし、レストランも美味いわけではない。そのへんの軽食でいいやと思い、Hauptbahnhofでサンドイッチとジュースを買う。売り子さんが「コーヒーか紅茶もつけて4.49Euroだから、どちらか選んでよ(ドイツ語)」と言うので、コーヒーももらう。駅構内で食べる。中くらいのバゲットにハムとかチーズがはさんであるので、十分お腹一杯。

S-BahnとU-Bahnを乗り継いでポツダマープラッツ駅に行き、歩いて絵画館へ。途中ソニーセンターを経由する。つい9年前にはポツダマープラッツはまだ開発途中で、ソニーセンターがいやに巨大に見えたのだが、今はずいぶん小ぢんまりして見える。
絵画館ではこれ。
http://www.smb.museum/smb/kalender/details.php?lang=en&objID=10801&typeID=10
まぶしいくらいに美しく修復された15世紀絵画の名品に圧倒された。点数は50点にも満たないくらいかもしれないが、その輝かしさにふと疲れが吹き飛んだ。
絵画館の常設展示のほうは以前にも見て、その点数の多さに懲りていたので、今回は前回見なかった地下と、オランダコーナーだけを見る。これも名品ばかりなのに照明が暗かったりして見劣りする、なんて思うのは目が肥えたせいか。ちゃんとフェルメールも収蔵されている(グラスワインという作品)ので、人だかりがなくなってから見届ける。

次は、WittenbergplatzのKaWeDeに家族とかのお土産を買いに。この辺は以前の「庭」(言い過ぎ?)である。途中で乗り換えたStadtmitteの駅では、アコーディオンでバッハのトッカータとフーガニ短調を弾いていた。構内に心地好く響くバッハ。アコーディオンの音色がはまっている。

宿に帰って着替えて、いよいよPhilharmonieに。

19:00から事前レクチャーがあるので行ってみると、ホワイエにイスが100個以上並べてある。こんなに人が来るのか、と思ったら本当に来た。お年寄りが多く、善男善女という感じ。時間になるとラフな格好のペーテル・エトヴェシュが登場するが、舞台監督みたいな雰囲気なので誰も気付かず拍手も起こらない。仕方なく私が拍手を主導。
30分間、いろいろとしゃべった。ドイツ語なのでほとんど分からないが、それでもベルント・アロイス・ツィンマーマンとあったときのことなども話していた。
「ベルント・アロイス・ツィンマーマンに会った時、『君はいったいシュトックハウゼンのもとで何をしているんだ?』なんて聞かれたから、『助手とかコピスト(写譜屋)をしてるんですよ』と答えたんだ。すると、『XXX』(よくわからず。でもきっと否定的なこと。だめになるぞ、とかね)と言われてね」
とても興味深いレクチャーだったが、この善男善女のお客さんたちは、「若い詩人のためのレクイエム」があんな奇天烈な曲だってことを知らないんだろうなあ(レクチャーでも触れなかったと思う。合唱の配置のことは少し言ってた)と感じられ、いろんな意味で本番が楽しみになった。


Do 23, April 2009 20 Uhr 5, Konzert der Serie H

Berliner Philharmoniker
Dirigent: Peter Eötvös

Sopran: Caroline Stein
Bariton: Claudio Otelli
Sprecher: Michael Rotschopf
Sprecher: Thomas Wittmann
Rundfunkchor Berlin
Einstudierung und Co-Dirigent: James Wood
MDR Rundfunkchor Leipzig
Einstudierung und Co-Dirigent: Howard Arman
Herren des WDR Rundfunkchors Köln
Einstudierung: Philip Ahmann
Herren des SWR Vokalensembles Stuttgart
Einstudierung und Co-Dirigent: Celso Antunes
Klangregie: Joao Rafael


Johann Sebastian Bach
Zwei Choralvorspiel für Orgel
Orchestrierung: Arnold Schönberg
"Komm, Gott, Schöpfer, Heiliger Geist" BWV667
"Schmücke Dich, o liebe Seele" BWV654

Richard Wagner
Siegfried-Idyll

Bernd Alois Zimmermann
Requiem für einen jungen Dichter
Lingual für Sprecher, Sopran- und Bariton-Solo, drei Chöre, Orchester, Jazz-Combo, Orgel und elektronische Klänge, nach Texten verschiedener Dichter, Berichte und Reportagen


当日のパンフレットの中にこの4人の作曲家の関連を探したら、ちゃんと書いてあった。しかもかなりコンセプチュアルなことが。
「若い詩人のためのレクイエム」の、一番最後にテープで流されるKonrad Bayerの詩、"die sechste sinn"(第6感)の一節は、次のように始まる。
"wie jeder weiß. wie jeder wußte. wie alle wußten. wie alle wissen. wissen das alle? das können unmöglich alle wissen."
「各々はどう知るのか。各々はどう知らされるのか。すべての者はどう知らされるのか。すべての者はどう知るのか。すべての者が知る?すべての者が知ることは不可能だ」
"wie jeder weiß."はバッハのプロテスタント、"wie jeder wußte."はワーグナーのユダヤ人排斥主義、"wie alle wußten."はシェーンベルクのユダヤ教、"wie alle wissen."はベルント・アロイス・ツィンマーマンのカトリック、だということだ。
(Michael Stegemann著の当日プログラムp.14から引用)
宗教的な意味があるとは思っていたが、この言葉がそれを象徴していたとは。このプログラムを組んだ人は本当に天才である。


バッハの1曲目、BWV667は、結構細かく動く演奏の難しい編曲なのに、結構早めの3拍子を一つで振るという荒業。ベルリン・フィルでなきゃ演奏できないね。
バッハの2曲目、BWV654は、CDで聴く限りはヴァイオリン・ソロだと思っていた部分がなんとチェロ・ソロ。超ハイ・ポジション続出。
1929年録音のホーレンシュタインとベルリン・フィルの音は妙にかったるいと思っていたが、実はそういう編曲だったのだとようやく分かった。とても不思議な音響と、密やかなロマンが印象的。

ジークフリート牧歌は、テンポ変化がかなり激しくておしゃれで、かつドライなのにロマンティックという、エトヴェシュにしか実現できない不思議な境地の名演。この曲をこんなに楽しんだことはこれまでない。まさにうっとりである。

さて、本命。
外にも出ずセッティング替えを眺めていたら、なんとヴァイオリンとヴィオラは編成に無いのね。
ど真ん中にアコーディオンとマンドリン、その外側にピアノ1台ずつ、左にジャズコンボ、右にチェロとコントラバス、管楽器は定位置、ポディウム席に合唱、さらに右上の客席と左上の客席に合唱が一組ずつ、指揮者と客席の間にソリストと朗読者。朗読者の脇にはそれぞれメガホン。
録音されたものとかプログラミングされた音は、いろんな位置に配置されたスピーカーから、いろんな方向で聴こえるように鳴らされる。合唱さえもマイクで拾った声を別の位置から流すことで、いないはずの真後ろからも声が聞こえてきて、みんなきょろきょろ。ハンブルガー・バーンホフのアレと同じ!
この曲は、何分何秒から何がどうというような書かれ方をしており、電子音声や歴史的人物の演説、ヘイジュードなどの音楽の引用は全部事前のプログラミングでなるので、指揮は秒数をカウントする機械を見ながら指揮することになる。演奏前に59:59を指していたが、この曲は60分以上ある。どうするんだろう。
演奏は完璧と言っていいだろう。すべてが克明に描かれ、指揮者は無機的に秒を刻むのでなく、きちんと呼吸し呼吸させ、テープと音楽と演説と叫びと、渾然一体となってかつ明確に分離して音楽は進んでいく。ハンマーは見事に決然と鳴り響く!マーラーのときと同じように!こういった前衛性に耐えられない善男善女のじいちゃんばあちゃんは、途中でどんどん席を立って帰っていく。やはりね。
一つ残念なのは、Ricercarという部分で、全く同じテキストの朗読をリチェルカーレ、つまりフーガのように順々に流して重ねる部分があるんだが、一つの声部の中で音の位置がばらばらにされてしまって、フーガの意味がなくなってしまっている。テキストの録音の部分はたいてい意味不明なのに、この部分だけは仕掛けが分かりやすいはずなのだが、これでは知らない人は何がなんだか分からないだろう。イライラは募るだろうなあ。
合唱が"Dona Nobis Pacem"を歌ってすべてが終わると、盛大なブラーヴォといくつかのブーイング。私を含めて何人かはスタンディング・オベーション。でも、奏者は全然嬉しそうじゃなかったなあ。楽しかったのは指揮者とオタク系聴衆だけか?
拍手を終えてとなりのおばちゃん(娘連れ、60代)が話しかけてくる。
「ホントに素晴らしい曲ね。世界のすべてが描かれている」
「作曲家はこれをリンガルと名づけたんです」
「今日は演奏も素晴らしかったわ。ベルリンフィルがいつもこうではないのよ。この曲は、ミヒャエル・ギーレンのも聴いたけど(初演??)今日のは特によかった。今度聴くときはもっと勉強しとかなきゃ」
「私はちゃんと勉強してきましたよ(ベルティーニのCDのライナーノートも持参)」
「アナタはベルリン在住なの?」
「実は日本から来たんです」
「このコンサートのために?それは素晴らしいわね。ぜひまたフィルハーモニーにいらしてね」

会話を終え、気持ちよくバスに乗ってホテルに帰る。
レストランに行くといつもの陽気な兄ちゃん。
「コンサート行ってきたの?」
「うん、ベルリナー・フィルハーモニカー」
「ホルンは誰だった?」
「(???なんでホルンのこと知ってんだ???)ええっと、ドール。シュテファン・ドールだった」
「彼はよくこのホテルに泊まりに来るよ」
「(なるほど!)実は今日がベルリン滞在最後なんだ」
「そう!よいTripを!」
能天気そうに見えて、人は見かけによらないものである。
パスタとビールで最後の晩餐。

風呂を浴びて、テレビを見て、0:30には就寝。
翌日は、淡々と飛行機に乗り、乗り換えし、ごはんを食べたり寝たりして、普通に関空についた。
出国ゲートでは体温を測っていた(後で知ったが豚インフルエンザ対策)。
税関では、かわいいおねえさんに妙に疑われて、カバンを開けさせられた。ニコニコしながら「ドイツはよく行くんですか」とか聞かれたけど、嬉しくないよ。

帰りの運転も問題なく、ついでに大阪で弓の毛替えをして弦を買って、15:30には帰宅。夕方にはジュニア・オーケストラの練習。ようやく短いようで長い旅行の日々が終わり。


posted by tak at 02:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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