2009年06月11日

初心者不可触ブルックナーその1 #8

bruckner8_adagio2.JPG

「初心者触れるべからず」のブルックナー異稿録音シリーズ。当然マニア必聴。

どの作曲家でも推敲は行っているはずだが、ブルックナーの場合、なぜか推敲の前のバージョンと後のバージョンが資料として残っていて、研究者が律儀に両方演奏用楽譜を準備しているおかげで、ブルックナーを聴くという行為自体がとても複雑になっている。
この交響曲第8番の演奏できる楽譜のバージョンは、楽譜が書かれた順に以下のようになる。

1.第1稿(ブルックナーの自筆譜を基にレオポルド・ノヴァークが監修)
2.第2稿(ブルックナーの自筆譜を基にレオポルド・ノヴァークが監修)
3.改訂版(ブルックナーの弟子が修正)
4.ハース版(ブルックナーの自筆譜の第1稿と第2稿を基にハースが再構成)

ハース版は、第2稿(ノヴァーク版)と並び立つ存在と考えるのが一般的だが、わたしは最初の原典版監修者であるロベルト・ハースがアレンジしたものだと思っている。なので、順番は最後に書いた。

そこでこのディスク。1と2の間の時期にブルックナーは第3楽章のアダージョだけを修正している。この自筆譜は1999年に発見され、日本人である川崎氏が「アダージョ第2番」として演奏会用に楽譜をまとめた。これを録音しているのだ。実はこの楽譜が録音されたのは2度目。1度目はエレクトーンによる演奏の録音だった。それが、今回の録音では、初めて普通のオーケストラで演奏されている。
このアダージョ第2番、関係者の多大な努力にもかかわらず、何かオーケストラが間違えて演奏しているようにしか聴こえない、ぎこちない音楽になっている。だが、それこそが、最終的に第2稿として完成させることができたブルックナーの偉大さを証明することにもなる。だからこそ、ブルックナーの8番を聴いたことのない人は、この録音で初めて8番を聴くというようなことは避けてほしいものだ。
演奏は、案外と言っては失礼だが、良い。指揮者の内藤氏は、これがブルックナーの8番を振るはじめての機会だったそうだが、堂々たる名演である。トータルで74分36秒と、テンポは全体に速いが、心地好い快速。オケもプロとしての基本的な水準はクリアし、ブルックナーへの共感も感じさせている。


アントン・ブルックナー
交響曲第8番ハ短調

1,2,4楽章:ノヴァーク版第2稿
3楽章:D.Gault氏と川崎高伸氏編集による、アダージョ第2番の楽譜使用。世界初演。

内藤 彰 指揮
東京ニューシティ管弦楽団
2004年9月4日 東京芸術劇場大ホールでのライブ録音
DELTA CLASSICS DCCA-0003
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