2006年07月06日

ネーメ・ヤルヴィの音楽

jarvi.JPG

京都市交響楽団第490回定期演奏会
平成18年7月4日(火)19:00
京都コンサートホール・大ホール
指揮:ネーメ・ヤルヴィ
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
グリーグ/叙情的組曲op.54
グリーグ/4つのノルウェー舞曲op.35
チャイコフスキー/交響曲第4番へ短調op.36

初ヤルヴィのコンサートのために、初めて京都市交響楽団のコンサートに出かけた。
京都コンサートホールはできてすぐのようで、とてもきれいだったが、なんとなく文化の香りが薄い気がした。
1,500円と安いP席より指揮者に近い4,000円のB席(2階R-2列13番)を買った。大正解。

さて、ヤルヴィ。

1曲目の叙情的組曲は、まるでおじいさんがコタツに入ってみかんを手にとってふと昔話を話し始めるくらい気楽に、振り始めた。
オーケストラの表現もその気楽さそのままでありながら出てくる音は充実しまくり。分厚い弦楽器。特に中低音が充実している。
ソフトな音質、きれいな音程、滑らかなダイナミクス、センスに満ちたテンポ変化。
ずうっとヤルヴィの指揮ぶりに釘付けだった。

まず、音程の良さはヤルヴィの音楽能力の高さゆえだろうと思った。
リハーサルで音程のことを指示したわけではなかろう。彼を見ていると、自分のしていることがすべて見透かされているような気がして、音程やアンサンブルを精密に合わせなきゃいけない気になってくるのではないだろうか。

次にキュー出しがこと細かである。
重要な楽器のではすべてキューを出す。すべてのキューのしぐさが表情に満ちていて、次に出てくるべき音楽の表情、音量、音のスピード感、歌いまわし、さらに楽器の種類までわかるくらいであった。

さらに、インテンポの部分でもビートを刻むことをいとわず、常に拍を取っていく。そのビートの幅はフォルテでも大きくはないしピアノなんて1センチも動いてないくらい。肩で指揮をすることもある。あの指揮を見ていれば、アンサンブルが崩れるわけがない。

フォルティシモでも表情は柔らかで、とても幸せな音楽を奏でる。熊のように大柄なヤルヴィもゴキゲンにビートを刻む。
幸せな瞬間。

1曲目から大拍手。7割の入りでしかないが、満員のような拍手。

2曲目の4つのノルウェー舞曲も同じように指揮者としては格別のことをするわけではないが、そのすべてのしぐさが音楽表現と直結して、しかもそのしぐさのレパートリーが膨大であり、あらゆる音楽の表情がしぐさだけで汲み取れるくらい。曲が終わるとブラーヴォが飛ぶ。前半なのに。でもその気持ちがよく分かる。

2曲目が終わった後に、なんかオケのメンバーも指揮者も楽譜をガサガサすると思ったら、なんとさっき演奏したノルウェー舞曲の第2曲をアンコール。さっき指揮したときの2倍のしぐさ、2倍のルバート、2倍のダイナミクスの変化で演奏。そのヤルヴィのしぐさが可愛くて、客席から笑いがこぼれるくらい。すごい!

この時点で頭を整理。前に、日フィルでマーラーの6番をやったときのリハーサルはただ曲を通すだけだったなんて話を聞いたことがあるが、あの指揮振りを見たら納得できる。口で指示しなくても、指揮ですべて表されている。あれでできなかったら奏者が悪い。

後半のチャイコフスキーは冒頭の運命の主題をまるでメゾフォルテのように振り始める。1楽章はアンサンブルが難しいが、こと細かにビートを刻み、一切の困難さを感じさせない。運命の主題は出てくるたびに柔らかな表情である。叫ばないチャイコフスキー。すべてのモチーフに言葉が付随しているように、語る音楽。
びっくりしたのは再現部第2主題のテンポの速いこと速いこと。やわらかく歌う表情のままテンポを速くすることで、その憧れに満ちたモチーフがいっそう光り輝く。

2楽章3楽章も特別なことは一切ないのにとても充実した瞬間の連続であった。3楽章はあの速い4分の2拍子をなんとひとつ振り。でもその分かりやすい予備拍で出だしで困ることは一切ない。

4楽章も本当にあきれるくらい細かく振る。基本的に4つ振りと2つ振りを適宜使い分ける。頭拍がパーカッションで金管がシンコペーションの裏拍を打つ、たいていの演奏でグジャグジャになる箇所でヤルヴィは丁寧に4つで振り、全くアンサンブルを乱れさせない。職人だ。
この4楽章の第2主題もとてもテンポが速い。1楽章と同じ効果がでている。
運命の主題が出た後のホルンの出とか、指揮がリラックスしているのでホルンも緊張する必要がなく軽やかに出られる。

コーダでは充分な音の洪水で、曲が閉じると大ブラーヴォ大会。

何度か出入りがあったあと、下手(しもて)に引っ込むときにまるで「ええっとアンコールは何だっけ」みたいなしぐさで譜面台のスコアを確認してアンコールを示唆して、客席が大爆笑。いやはやエンターテイナーだわ。
アンコールはヤルヴィ曰く「おめでた、モーツァルト」??後宮への逃走だった。これがまた軽やかかつ分厚い演奏で、劇場感覚に満ちた序曲らしい演奏であった。またもや大ブラーヴォ大会。
なんとも充実したコンサートだった。ヤルヴィの才能と魔法を存分に堪能した。あんだけ膨大な録音を行えるのは、才能のなせる業に他ならないことを確認でき、大いに収穫であった。


posted by tak at 01:39| Comment(0) | TrackBack(3) | ネーメ・ヤルヴィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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