2007年02月08日

話題沸騰?マルテのブルックナー

marthe_bruckner3.JPG

マルテに関わる怪しげな情報(チェリビダッケの弟子とか)といい、炎をバックにブルックナーの石膏像をにらみつけるクラシックらしからぬジャケットといい、こりゃあゲテモノに違いないと思って聴いたんだが、さにあらず。演奏がいい。

ペーター・ヤン・マルテは、1981-82年にはチェリビダッケに師事し、1987-88年にはインドに滞在(修行?)したという、コンポーザー・コンダクター兼オルガニスト。ライナーの解説も自分で書いているくらい入れ込んでいる。
解説にはビートルズとかジミヘンとかピンク・フロイドがどうのこうのとか、ブルックナーの楽譜は学者先生の占有物になってていかんとか、いろいろ不思議な話題が出てくる。英語翻訳ではクラシックの解説らしからぬかなりハチャメチャな文章に見える。
ともかく、マルテにとっては、この3番はブルックナーが3つの版を作ったにもかかわらず、ちゃんと完成してないと見えるようで、自分なりの完成版を作ったということだ。聴く限りは第3稿がベースだが、第1稿も第2稿も1876年アダージョも取り入れている。アダージョと4楽章では第3稿以外の部分も追加している。スケルツォも第2稿と同じコーダ付き、というか第2稿そのものだろう。
おそらく第3稿の成立年代(1889年、8番の第2稿成立の直前)を根拠にしてのことだろう、8番や9番と同じ2楽章=スケルツォ、3楽章=アダージョに変更している。これはブルックナー自身も2番の2つ目の稿で行っていることで、コリン・デイヴィスが行った7番における入れ替えと同じく、私には違和感はない。マルテはこれにより「8, 9番とともに"trinity"を形成した」なんて書いている。trinityは単なる3つ組だが、Trinityなら「三位一体」。三位一体と言えば、ブルックナーの交響曲においては1楽章と4楽章の主題が3つあることの根拠となっているように、重要な概念であるが、それを意識した言葉だろうか。
(ちなみに第1稿は1873年の「初期」、第2稿は1877年の「中期」、第3稿は1889年の「後期」の作品と私は位置づけている)

解説では、マルテ自身が作曲した部分もあると書いている。アダージョ楽章の3分の2くらいのところ(タンホイザー引用の前)にトリスタンの冒頭テーマを使ったフガートみたいなところがあるんだが、これってマルテのオリジナル?4楽章にも明らかに作曲っぽいところがあってぶっ飛んでしまう。アダージョも4楽章もクライマックスでシンバル+トライアングルが鳴るし。ティンパニも普段といろいろ違うことをしている。4楽章はゲネラルパウゼをティンパニで埋めてたりするし。
残念ながら、そういう部分は自然と浮いて聴こえてしまう。それがブルックナーの音楽とマルテの音楽の何がしかの差なんだろう。いい悪いというのではなく。

演奏はユーディ・メニューインが設立したユース・オーケストラ。ライブにもかかわらず1楽章からやる気満々で、最後まで充実した演奏を行っている。
またマルテの指揮も、チェリビダッケのコピーとか亜流とかいうのでなく、自分の音楽として遅いテンポをモノにし、柔らかく分厚い音楽を作っている。

結果的に、かなりユニークな(というかマルテ以外演奏しなさそうな)ヴァージョンの3番ということで、怪しげなジャケットにすることにより「マニア以外不可触」にしたことは正解だ。これを聴いて普通の人にブルックナーって変とか思われても困るし。そうじゃなくてもブルックナーは十分変なんだから。

ちなみに相当迷いつつも買う気になった理由は、レーベルがオーストリアの雄、Preiserレーベルだったこと。フランツ・シュミットの諸作品に親しむようになったのも、バリリ・カルテットのベートーヴェンと出会えたのもこのレーベルがあってこそだった。このまじめなレーベルがこんなはじけたCDを出すというのも面白い。
9番も買ったがまだ聴けず。また後日。


Peter Jan Marthé
European Philharmonic Orchestra

Anton Bruckner
Symphonie Nr.3 d-moll New Version Peter Jan Marthé
1. Mehr langsam, Misterioso 27:58
2. Scherzo. 12:08
3. Adagio, bewegt, quasi Andante 27:00
4. Allegro 20:33

2005.8.19, Live Stiftsbasilika St. Frorian
PREISER


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