2007年02月09日

真剣?冗談?マルテのブルックナー

marthe_bruckner9.JPG

9番もいい演奏だ。3楽章までは。
テンポは、ジュリーニとかチェリビダッケとかマゼール(FMでやってたバイエルン放送響)とかと似たようなものだから驚きはないが、何と言っても奏者のしつけ方がいい。
ブルックナーの歌いまわし、ブルックナーの音、ブルックナーの呼吸を理解した音楽作りを、ユース・オーケストラがやっているのだ。ヴェルザー=メストとグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラとのブルックナーの8番もよかったが、その演奏よりも曲との親和性はさらに高い。技術では劣ったとしても。
1楽章ではパッセージ単位(ブロック単位というべきか)でテンポの格差を大きく取ったりする所が気になるが、これもマゼールの演奏でよくなされていたこと。趣味は悪いが否定はしない。

この曲でもスタミナの心配をせず1楽章からフルパワーだが、おそらく金管も倍管とかにしているんだろう。テュッティの音の厚みもそうでなければここまでにならないと思う。たとえば、鳥取でも演奏されたフィリップ・ヘレヴェッヘとロイヤル・フランダース・フィルの9番のフィナーレ付きでは、明らかに3楽章まではスタミナ配分のために大人しくしていた。

2楽章でちょっと変わった解釈がある。主部のコーダ部分で、ほんのわずか間を取りつつ入りの音をふわっと柔らかく少し遅いテンポで入るのだ。これはゾクッと来る。癖になりそう。
3楽章もよいテンポ、よいバランス、良い音色。美しい演奏だ。

4楽章は完全に作曲だな。スケッチのパッセージも使ってはいるが、創作部分から原典が見え隠れするという感じ。一応第1主題は原典の第1主題だし、第2主題も第2主題、第3主題も例のコラールだが、妙にシリアスな創作部分がそれを覆っている。その音楽がシリアスであればあるほどパロディに聴こえて脱力してしまう。サマーレ、マッツカ、コールズ、フィリップスの補筆完成版の流れがいいだけに、これは話の腰を折ってばかりのようだ。
ちなみに、サマーレ、マッツカ、コールズ、フィリップスの補筆完成版は、大阪のササヤ書店でスタディ・スコアを売っていた。1万円弱と高かったので相当迷った末に買わなかったが、やっぱり買っておけばよかった。
提示部の第1主題のところではロマンティックっぽいところがいろいろある。そのあとにトリスタンの2幕の狩のホルンの引用みたいなの。
おっと、第3主題のコラールの最後で、トランペットをオクターブ上げている。ブルックナーが低いF管のトランペットを想定して作曲したことを考えればこれはありえない。だから、実はギュンター・ヴァントの5番の1,4楽章の最後の音をオクターブ上げるのもありえない解釈なのだ。
展開部には5番の引用もある。第1主題を使ったフーガはちゃんとある。でもそのあとにスターウォーズの引用もあるぞ。いやいや、それ自体がトリスタンの狩のホルンの引用なのか。そのあとはリングかなんか、やはりワーグナーの引用がある。マーラーの7番っぽいところもある。
コーダ前、3楽章の最初のテーマがトリスタンと関連があることを如実に示すようなネタばらしっぽい部分もある。なるほど。
コーダは、なぜか7番のアダージョをベースに、9番はもちろん、7番の1楽章やら4楽章、8番のコーダやら、様々な引用が嵐のようにある中、9番の1楽章の第1主題のモチーフで終わる。なんだそりゃ、って感じ。もともと補筆完成版でもコーダは創作なのだから、これも創作で構わないのだが、どうなんだろ。ヘルゴラントを引用した補筆完成版もいまひとつだから、まあ非難せずとも良かろう。あまりにテンポが遅くて、何のモチーフなのか聴き取れないところもある。例によって4つの楽章のテーマが重なるところがあるようなんだが、よく分からない。
などとけちをつけながら聴いてみると、案外補筆完成版と同じ順で音楽は進行している。そうは言ってもあまりにグロテスクな曲だなあ。悪い夢を見そうだ。

3楽章までで十分終結感のあるいい演奏だし、4楽章はブルックナーを引用した新曲と考えた方がいいな。ゴットフリート・フォン・アイネムの「ブルックナー・ディアローグ」みたいなもので。あれもこの4楽章のコラールを使ってたしね。


Peter Jan Marthé
European Philharmonic Orchestra

Anton Bruckner
Symphonie Nr.8 d-moll New Finale by Peter Jan Marthé
1. Feierlich, Misterioso 29:00
2. Scherzo. Bewegt, lebhaft/ Trio. Schnell 13:21
3. Adagio. Langsam, Feierlich 27:56
4. Finale. Bewegt, Kraftvoll 20:33

2006.8.18, Live Stiftsbasilika St. Frorian
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