2007年04月01日

ツェンダー/ブラームス/シェーンベルク

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ブラームスのピアノ四重奏曲第1番シェーンベルク編曲版第4弾。

ドイツのユース・オーケストラである「ユンゲ・ドイチュ・フィル」の25周年記念アルバムに収録された、作曲家でもある指揮者ハンス・ツェンダーの演奏である。

このピアノ・カルテットのみドイツ・グラモフォンの録音(他は放送録音)のようで、創立間もない1979年の演奏。この曲の演奏としても先駆け的なものかもしれない。
すっきりとして明快で、曖昧なところのない名演だ。もちろんただ単にきちんとしているだけでなく、歌もある。ほのかに漂うロマン。テンポは遅め。その分表情が薄く感じられるかもしれないし、そこにのみ学生らしさが見え隠れする。
2楽章の音程が高くて難しそうなホルンソロで、逆に若者らしいテクニックの確かさを聴かせている。
3楽章は、遅さが崇高さに昇華している。あのアホっぽいラッパがギンギンなる部分でさえ、格調高く聴こえる。
なのに、なぜか4楽章の最初の部分では浮き足立ったような落ち着かない演奏。細かい音符が多くて難しいということもあろうが、それだけではない、何を表現すればいいかよく分からない戸惑いのようなものが感じられる。その後の楽節(トランペットから始まる部分と、仕立て屋の恋で使われた部分)は何の問題もなく格調高い音楽。コーダも見事。

ツェンダーは、自作の「シューマン・ファンタジー」の演奏も収録されている。
シューマンのピアノ曲をベースにした曲のようで、「冬の旅」のオーケストレーションも手がけたツェンダーらしく、ドイツロマン派への偏愛振りがうかがえる、ロマンティックな編曲。なぜかおどけた風情が漂うのが興味深い。

合わせて他の曲の演奏の感想を。

ロンネフェルトはドイツの作曲家のようだが、私は他に聴いたことがない。いかにもゲンダイオンガク。演奏は普通に上手い。指揮のクリストフ・プリックは、フランツ・シュミットのオペラ「ノートルダム」の全曲盤の演奏を持っている。

コンドラシンの演奏がいくつかあるが、これは一つのコンサートかもしれない。
ラヴェルのスペイン奇想曲、ストラヴィンスキーの4つの習作、ショスタコーヴィチの交響曲第9番であるが、これは、この3曲だけのカップリングで、普通に売っても全然問題ないような素晴らしい演奏だ。いわゆる「大人の音楽」にちゃんと聴こえるし、オーケストラ芸術として過不足ない。コンドラシン恐るべし。

作曲家ルトスワフスキの自作「チェーン1」と、ドイツの「ゲンダイオンガク」の代表的作曲家ベルント・アロイス・ツィンマーマンの1楽章の交響曲。
「チェーン1」は、残念ながら「演奏しただけ」みたいな感じだ。ゲンダイオンガクだがもっと上手く演奏できる曲のような気がする。ソロの部分は上手いが、楽器がたくさん重なってくる部分で、個々の楽器の役割が全体に反映されていかない。
ツィンマーマンは、これはいい!団員の「ようく知ってますよ」という余裕の空気が冒頭から漂っている。遅い部分の空気感、炸裂する部分の鮮烈さ。ルトスワフスキの指揮者としての巧みさも伺える。しかしまあ、なんともかっこいい曲だ。金管バリバリ、パーカスドカンドカン。ツィンマーマンの曲の中では一番良く知られたものだと思うが、もっと演奏されてもよいのに。

大指揮者ガリ・ベルティーニの指揮も2曲。これも一つの演奏会か。マーラーの10番の1楽章とヴェーベルンのパッサカリア。
録音の少ないベルティーニの演奏がこうして素晴らしい精度の演奏で聴けるのはありがたい。オーケストラのヴェーベルンの理解度、マーラーへの愛情、それがひしひしと感じられる演奏だ。華やぎはないが、質実剛健なドイツの音も心地好い。

そして、ピエール・ブーレーズの指揮したドビュッシーの「遊戯」。
ブーレーズが考える音楽の、アンサンブルの理想像というのはとてつもなく高いようだ。メンバーを全く子ども扱いせず、恐ろしい精度の音楽を作っている。
最初は、精度の高さだけで感心しているのだが、だんだん団員の体温が上がっていくようで、音楽に熱がこもっていく。クールとホットの同居。

ユンゲ・ドイチュ・フィルと言えば、私が中学生だか高校生だかのときにFMでエアチェックしてずっと聴いていたシャルル・デュトワの指揮したショスタコーヴィチの交響曲第8番でよく知っているのだが、本当に上手いオーケストラなのである。ユース・オケなのに、ちゃんとオーケストラ芸術を表現し得ている。最近はグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラとか、いろんなユースオケが出てきたが、老舗(?)の味わいは格別である。
また、収録された曲がすべて20世紀の音楽で、いちばん古いのがラヴェル、次がヴェーベルンというのも凄い。20世紀音楽をコンパクトにまとめたという意味でも、すぐれたコンピレーション・アルバムである。


Junge Deutsche Philharmonie, jubiläums Edition

Disc 1

Peter Ronnefeld
Orchestersuite aus der Oper "Die Ameise" (1959-61)
Dirigent: Christof Prick
1976, Sender Freies Berlin

Igor Stravinsky
4 studies for orchestra (1914/1929)
Dirigent: Kyrill Kondrashin
1980, Sender Freies Berlin

Dmitri Shostakovich
Symphony No.9 in E flat major, op.70 (1945)
Dirigent: Kyrill Kondrashin
1980, Sender Freies Berlin

Witold Lutosławski
Chain I (1983)
Dirigent: Witold Lutosławski
1989, Polskie Nagrania

Bernd Alois Zimmermann
Sinfonie in einem Satz für großes Orchester (1951)
Dirigent: Witold Lutosławski
1984, Westdeutscher Rundfunk, Köln


Disc 2

Arnold Schönberg
Brahms Klavierquartett g-moll op.25 (1937)
Dirigent: Hans Zender
1979, Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg

Anton Webern
Passacaglia für Orchester op.1 (1908)
Dirigent: Gary Bertini
1983, Sender Freies Berlin

Gustav Mahler
Adagio aus der Symphonie Nr.10 (1910)
Dirigent: Gary Bertini
1983, Sender Freies Berlin


Disc 3

Hans Zender
Schumann-Fantasie für großes Orchester (1997)
Dirigent: Hans Zender
1998, Norddeutscher Rundfunk

Claude Debussy
Jeux (Poéme dansè) (1912-13)
Dirigent: Pierre Boulez
1990, Sender Freies Berlin

Maurice Ravel
Rhapsodie Espagnole (1907/08)
Dirigent: Kyrill Kondrashin
1980, Sender Freies Berlin

Berlin Classics


posted by tak at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 聴いた音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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