2007年10月27日

グリモーのベートーヴェン

grimaud_beethoven.jpg

すっかりDGアーティストとなったエレーヌ・グリモーのDGにおける5作目のディスク。ボーナスDVD付き(限定版のみ)。

エレーヌの演奏は、15年くらい前に実演を聴いている。
東京のどこだかのオケをセルジュ・コミッシオーナが振ったコンサートで、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルトの4番だった(ちなみにメインはエルガーのエニグマ変奏曲)。熱がこもりつつしなやかな息遣いの、構築感と軽やかさが同居した素晴らしい演奏だった。もちろんサインをもらいに行って、ステージの毅然とした姿とはまた別のチャーミングな笑顔に心奪われたものである。

ところが、その後に発売された録音からは、実演で感じられた情感はあまり聴こえず、実直さの方が目立っていた。僅かに、ザンデルリンクとのブラームスの1番と、マズアとのベートーヴェンの4番の、いずれもライブ録音にだけはしなやかな息遣いが十全に感じられた。

今回の「皇帝」は、実直さとしなやかさが上手く折り合いをとって同居した、エレーヌの進化(=深化=真価)を感じさせる演奏である。何気なく正確に演奏しているだけなのに、音楽の素晴らしさを常に感じさせる演奏だ。

ウラディーミル・ユロフスキの指揮するシュターツカペレ・ドレスデンがまた面白い。ある意味モダンオーケストラのフォーマットでの最新の進化系ではなかろうか。
なんともごつごつした、しかしながらこれまた音楽を感じさせる。モダンオケ的なきれいに化粧した演奏でもないし、ピリオド・アプローチの軽やかに弾むリズムとも違う。おそらくこれを普通の人が聴いたら「下手」と思うだろう。だが、聴こえてくる音は常に愉悦に満ち、音楽の素晴らしさを伝えるのだ。
DVDに収められたリハーサルを見ると、オケのメンバーはなんとも憮然としていて、全然面白そうに見えない。なのに出てくる音は面白い。このギャップは何なんだろう。

ピアノ・ソナタも同様に、何にも特別なことはしていない実直な演奏なのに、類まれなセンスを感じさせる。

ちなみにDVDは前述の皇帝のリハーサルの間にインタビューに答えるようなモノローグが挟まった映像と、写真集。私より二つも年上のエレーヌはなんとも若々しく輝かしく見える。

エレーヌはこれからも目が離せない。


Hélène Grimaud
Vladimir Jurowski
Staatskapelle Dresden

Ludwig van Beethoven

Concerto for Piano and Orchestra No.5 in E flat major, op.73 "Emperor"
2006.12, Lukaskirche, Dresden

Piano Sonata No.28 in A major, op.101
2007.7, Berlin, Siemens-Villa

DG


posted by tak at 01:07| Comment(1) | TrackBack(0) | エレーヌ・グリモー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
音質が悪い
Posted by gkrsnama at 2010年05月17日 23:11
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