
いつも読んでいるCLASSICAのiio氏の書かれたクラシック本。
ごくごく常識的な内容ながら、トリヴィアルなネタもそこここにちりばめられ、かなり楽しめた。P.122の、ドヴォルザークがアメリカに招かれた理由とか。道理でアイブズとかアメリカの作曲家のロマン派的な曲がドヴォルザークに似ているわけだ。
何より洒脱というかくだけたというかiio氏オリジナルの語り口がさらさらと読ませて心地好い。ショスタコーヴィチの項だけはむずかしい漢字が多くて目がちかちかしたけど。
付録のCDはあまり好みの演奏でなかったり。ゲオルク・ショルティ指揮ウィーン・フィルのジークフリート牧歌がポルタメント満載で笑える。全然ショルティの言うこと聞いてなかったんだろうな。
ところで、できれば再版時に記述を直してほしいところがある。
ブルックナーの項
P.80脚注3 7行目
自身の改訂版以外では「ハース版」「ノヴァーク版」が有名。
↓
現在では通常は作曲者本来の意図を再現した「ハース版」「ノヴァーク版」で演奏される。
自身の改訂版というのがよく分からない。6番とか7番のことかな。3,4,5,8,9番は、弟子の名前が冠されて呼ばれている。シャルク改訂版とかレーヴェ改訂版とかヴェス改訂版とか。
正確には「ハース版」も「ノヴァーク版」もブルックナーの意図に忠実かどうかはよく分からない(特にハース版の8番)のだが、簡潔に言えばこれで間違いではないと思う。
チャイコフスキーの項
P.119 最終行
ファゴット奏者は宇宙一弱く吹くべし。
↓
なぜかいつもバスクラリネットが吹く。
原文が、「ぜひ(バスクラでなく)ファゴットで、宇宙一弱い音で、吹いてほしいなあ」という願望ならばそのままで大賛成なのだが、なかなかそうは読み取れないし、入門者なら実際のCDの音がファゴットと違ってて混乱するんじゃなかろうか。
ならば、バスクラで演奏される事実を書いた方がよい。文字数もぴったり。
楽譜どおりファゴットで演奏したので有名なのはメータとロサンジェルスの演奏らしい(私は未聴)。最近の演奏ではネーメ・ヤルヴィ大先生とエーテボリ交響楽団の演奏がファゴットで吹いている。
あと、結構致命的な誤植があるので、再版時には直していただけるとありがたい。クラシック入門者が混乱するとアレなので。
ヴェルディの項
P.75脚注2の項名
「第二の国家」
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「第二の国歌」
第二の国家なんて字を見ると急に政治論的な文章を読んでいるような錯覚をおぼえてドキッとしてしまう。
ともあれ、コンパクトにまとまったいい本なので、再版されるくらいバンバン売れてほしいですね。