2007年02月05日

ベルナルト・ハイティンクという人

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ハイティンクのブルックナーの録音は多い。コンセルトヘボウとの0番を含む60年代の全集、同じコンセルトヘボウとの80年代の7,8,9の再録(9番のみ現役)。
そしておそらくウィーン・フィルとの全集に発展するはずだった一連の録音。このウィーン・フィルとの録音をようやくすべてきちんと聴くことができた。

3番は大学時代に持っていたのだが、4番と5番は友人に借りて聴いただけ。8番はこないだ大阪で入手して初めて聴いた。
これらをまとめて聴いて、ハイティンクの偉大さと、その録音の評価の難しさをひしひしと感じた。

どういうことかというと、分かりやすい名演ぶりではないのだ。
しょっちゅう縦の線はずれる割りにテュッティは雄大に、雄渾に鳴る。シュターツカペレ・ドレスデンとの最近の来日公演でも思ったが、縦の線とかアンサンブルはオケが考えるべきことであり、本番の演奏ではイメージの伝達に主眼を置いているのであろう。
ハイティンクのイメージは相当に大きく深くドラマティックなものだ。あまりに深すぎてオケも着いて来れないくらいに。というか、深いイメージとアンサンブルがオケの中で両立できていないような感じがある。それも、8番に至れば完全に合致し、恐ろしくスケールが大きくてアンサンブルも整った演奏を聴かせている。

おそらく、これにはオケのほうの曲への慣れ具合も関係しているのだろう。ロマンティックも5番も録音は10年ぶりくらい、3番はおそらく第2稿は初録音(初演奏?)だろう。特に3番の第2稿特有の部分についてはオケのイメージが固まっていない気がする。
8番に関しては、80年代にジュリーニとカラヤンと録音している。また、90年代のブルックナー・ブームでたびたび演奏するようになったのだろう。オケのアンサンブルも焦点が明確に合っている。

そのようなオケの状況とは関係なしに、ハイティンクは音楽を作る。音を漂わせ、テンポを煽り、揺らし、オケの総力を出し尽くす。
もちろんおざなりな練習ではなかろうし、イメージ的なことばかりでなくアンサンブル的な練習もしているのだろうが、最終的にはそういう細々としたことはいったん御破算にして、あくまでも大ぐくりの、音楽の本質的な部分を指揮で伝え、実現させようとしているのではなかろうか。それについてこれるかどうかはオケの問題であって指揮者の問題ではない、と。
そうすると、聴衆としては縦の線がどうのこうのみたいなことをこだわっても仕方がないし、そういうことしか分からないはたち前後の私みたいな聴衆には「茫洋としてよくわからないけどなんとなくいい」みたいな感想しか抱けないわけだ。

この歳になって、ハイティンクの本当の凄さ、素晴らしさが感じられるようになったと思う。誰だ、彼が「交通整理」の指揮者なんて言ったのは。交通整理なんかしちゃいないぞ、二重の意味で。彼がやっているのは作曲家が書いた設計図に命を吹き込む作業だ。
これはコンセルトヘボウとのクリスマス・マチネーのマーラーの録音でも同じように感じられる。9番なんか、あんなに柔らかくて大きな音楽を作れる指揮者はざらにいない。

ウィーン・フィルとのブルックナー・チクルスが全集として完成しなかったのは、もちろん同グループ内でアバドの録音と計画がかぶってしまったこともあろうが、正当な評価ができなかった私のような聴衆にも責任があっただろう。今からでも遅くないので、ウィーン・フィル初の単独指揮者による全集を完成させてもらえないものだろうか。PHILIPSが未だに60年代の全集を何度も再発しているのを見るととても無理だろうが。


Anton Bruckner

Bernard Haitink
Wiener Philharmoniker

Symphonie Nr.4 Es-Dur "Romantische Symphonie" (Fassung: 1878/80)
1985.2, Musikvereinssaal, Wien

Symphonie Nr.5 B-Dur
1988.3, Musikvereinssaal, Wien

Te Deum
Karita Mattira soprano
Susanne Mentzer mezzo-soprano
Vinson Cole tenor
Robert Holl bass
1988.12, Musikvereinssaal, Wien

Symphonie Nr.3 d-moll (Fassung: 1877)
1988.12 Wien

Symphonie Nr.8 c-moll, Edition: Robert Haas
1995.1, Musikvereinssaal, Wien

PHILIPS

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