ジョージ・セルがシューマンを敬愛し、たびたび録音・演奏していたことは有名である。
クラシック・ヲタクにとっては、1957年のクリーブランド管弦楽団とのスイス、ルガーノでの交響曲第2番のライブが、必需アイテムである。
さて、このたびunited archivesなるレーベルで出始めた一連の古い録音の復刻盤(http://www.hmv.co.jp/search/index.asp?genre=700&adv=1&label=UNITED)のなかで、もちろんどれもこれも聴いてみたいけど、ひときわ目を引いたのがこのセルのシューマンの旧録音だった。
特に1947年の、ジョージ・セルが音楽監督に就任してすぐの録音が気になったのだ。http://www.hmv.co.jp/product/detail/2527475
見事な演奏である。
ライナー・ノートによれば、1940年にセルがクリーブランド管弦楽団の演奏を聴いたとき、「規律」と「清さ」に感嘆し、1944年に客演したときに、一刻も早くその規律と秩序を取り戻さねば、と思ったそうだ。
果たして、1946年に音楽監督に就任し、翌47年の4番の録音ではすでに「完璧」といっていいような演奏を行っている。正確さ、清潔さとともに歌にも満ちている。
1952年の2番では、1楽章と4楽章で、浮き足立ったような落ち着かなさが聴かれるが、2楽章と3楽章は名演だ。
もちろん、この演奏(録音)だけあればもうほかにいらない、という類の演奏であるわけではない。
最も気になるのは、表現の「青さ」であろうか。指揮者の、ではなく、演奏者の。弦で言えば、弓が弦に上手く張り付いていないような印象があり、管楽器では、あまりにもまっすぐな音の姿が気になる。
セルのテンポが少し速めで、それがそういった印象をより強めている。
録音に関しては、モノラルであるが全く気にならない。と言っても、普通の人はステレオで聴きたいものだろう。
もちろんそうしたときのための解決策はある。そう、セルの新録音を買えばいいのだ。http://www.hmv.co.jp/product/detail/1852456
旧録音は、クリーブランドの歴史としての名盤であり、新盤はシューマンの理想的演奏の一つである。
ちなみにこのunited archives、ヨーロッパのレーベルのようだが、CDのつくりが凄い。レーベル面がLPレコードそっくりなのは他にも例があるが(ANDANTEとか)、信号面まで真っ黒なのだ。CDプレーヤーにとって必要な光の波長と人間の可視光の波長は違うから、別に銀色に反射しなくてもいいということだろう。目で見ることがすべてではない、ということを実体化した画期的なレーベルである、なんてことは考えすぎか。
Robert Schumann
Symphony No.2 in C major, op.61
1952.12.28
Symphony No.4 in D minor, op.120
1947.11.26
united archives